キャラクター

ラブリー！　スマート！　ド根性～！

「コラ最後ー！　ま、いっか☆
次はファル子のお名前ちょーだい！」

逃げてもかわいい、あ～ファル子ー！

「あーん、いい感じ☆　それじゃラスト！
ファル子にラブ☆きゅんちょーだいな！」

L・O・V・E！
LOVEきゅんファル子ーッ！！！！

「ありがとーっ！　ファル子、絶対
トップウマドルまで逃げ切ってみせるから！
全力で追いかけてきてね☆　チュッ♪」

……そう、あなたですよ。あ・な・た♪
私を見つめてる、あなたにあげます～。

ふふっ、不安そうなお顔でしたね～。
私が勝てるかどうか、心配なんですか？

大丈夫、大丈夫、確かにオグリちゃんも
イナリちゃんも、他の子も……
とっても強くて、いいこですけれど――

――きっと私が勝ってみせます。
だからのんびり、見守ってくださいね～。

それじゃあ、頑張ってきます～。
いいこで待っていたら……
よしよし、してあげますね♪

サクラバクシンオーの自信は、弁当箱からも
溢れ出そう……いや、溢れていた。

「ピクニックにはサンドウィッチが大定番！
栄養も彩りもカンッペキでしょうッ！？」

彼女のお喋りに合わせ、パンが揺れ、
きゅうりが踊り、ハムが舞い……。

「ではバクッとひと口でいきましょう！
何せピクニックは始まったばかりです！
早く食べていっそ食べながら走ります！？」

気づけば――桜色の瞳が眼前に迫っていた。

「さあッ！　バクシンで召し上がれッ！！」

エアシャカールが獰猛に飛び出した時、
場内の誰もが「またか」と嘆息した。
いつもの暴走だ、体力が続くわけがない。

（とか、浅ェこと思ってンだろうなァ）

だが彼女はペースを崩さずかえって加速し、
嘆息をどよめきに変えていく。

（この展開になることは確定してんだ。
逆算してスタミナつけまくったっつーの！）

幾度も重ねたシミュレーションが
たったひとつの『式』を導き、そして――

「証明終了だ、バァカ！」

予想外の結果に罵声まで飛び交う場内で、
エアシャカールだけが――嘲笑っていた。

「お父さん、お母さん、妹たち。
見ててね。お姉ちゃん、がんばるのっ！」

スタートダッシュ、彼女は力んで飛び出す。
その反動か、右に少しだけヨレてしまう。

（やばっ！　けど大丈夫！）

後脚を思い切り蹴り上げ、すぐ立て直した。
次の瞬間には、ミスも家族も競争相手も
全部頭からすっぽ抜け――

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……あははっ！」

そよ風なんて生易しい。
ターフを戯れに薙ぐ、暴風だった。

満場のファンが曲に合わせ揺れる。
ファインモーションの振る手も、
自然と気品が滲み出るようだった。

（レースでドキドキした後にも、
こんなに素敵なドキドキが待ってるんだ）

それは窓枠に切り取られてはわからない、
彼女の夢想した以上の感動で……。

（まだまだたくさん、思い出が欲しいっ！
このトレセン学園で、みんなともっと――）

「走って踊って、笑って！　楽しもう♪」

――幸せのクローバーは、駆け回らなければ
見つからないものだから！

ぴょこぴょこ跳ねる小さなウマ娘。
パドックでのタマモクロスは、
飛んでも叫んでもイマイチ目立たない。

「ええいっ、全員こっち見ろっちゅーねん！
小さいからって舐めるなーっ！！」

空に向かって全力で飛んで、
ようやく人々の注目が集まったところで――

「ええかアンタら、覚悟せぇっ！
ウチの走りでビビらせたるからなーっ！」

ガルルと吠える彼女を微笑ましく見守った
観客が、イナズマに打たれるまであと少し。

「にゃはは～っ！　いち抜け～っと♪」

追い込みをかけだした競争相手に合わせ、セイウンスカイもトップスピードで走る。
“逃げた”ウマ娘が“最後の直線で”だ。

「『逃げまくって休んじゃえ』作戦大成功♪　コレで後はゆっくり流しても――」

「セイちゃんっ……捕まえてみせる……！」

「――ってわけにはいかないか。ちぇっ！」

（まあ最初から、楽する気はないけど。私だって……勝ちたいからさっ！！）

「捕まえられるものなら捕まえてごらん。雲に形はないけどねー♪」