キャラクター

ダービーの、勝利者インタビュー。

でも不思議だ。
本当にこの場所に立ったら、
涙なんてちっとも出てこない。
だって、忘れたくないんだ。
真っ青な空。
いっぱいのお客さんの笑顔と歓声。
大好きな友だちと全力で競い合った
この景色の――全て！

涙でにじませるなんてもったいないよ。
3人で走ろうって約束して、励まし合って
負けたくないってがむしゃらに走って
たどり着いた……夢の場所だもん！

「アタシが、このサイコーの
ダービーを勝利したウマ娘、
ウイニングチケットですっ！！」

そして、夢のその先は、
まだずっと遠くまで続いてる――！

勝つのは主役で、いつも輝いている。
負けた脇役には、眩しすぎるほどに。

努力は報われないことばっかりだし、
欲しいものにはあと少し手が届かない。
それが現実。

わかってる。
わかってるけど、わかりたくない。

「あは……ほんっと、笑っちゃう」

だって、どうせまた走るんだもん。
輝けるいつかを夢見て。

ウェイクボードを操り、軽々と
宙を舞うウイニングチケットに、
船上は揺れていた。

「な、なんまらすごいです……！」

「あの技、初心者は無理って
言われてましたよね？
さすがチケゾーさん！」

「むぅ、野生の勘ってやつね……」

「さいっこう～ッッッ！
もう1回ッッ！！」

「あら！　景気がいいわね♪
チケゾーちゃん、2回転ゴーゴー♪」

「任せてくださいッッ！
いっけぇ、これがアタシの――！！」

――ボードが散らすしぶきのような、
キラキラの歓声が船上からあがった。

「ん～♪　このジュース、
しゅわしゅわで甘くておいしい♪」

（ちら……）

「ふふん、アンタも飲みたいんでしょ？
けどゼーッタイ、あげないもん♪」

（じゅるじゅる、じゅる……）

「……あ～、もう飲み切っちゃう！
味わえないのってかわいそうね！」

（じゅる、じゅる……）

「……ねえ、欲しいんでしょ？
なら素直に言いなさいよっ！」

（…………）

「……ふふん、しょーがないわね♪
じゃ、アンタのストローはこっちね」

（ぷすっ……カラン）

「がんばって飲みなさいよ？
氷しか残ってないけど！　ぷぷ♪」

「いいかい、三角筋？　余計な力は抜いて、
リリースまでエネルギーを溜めるんだ。
軸がズレないようヒラメ筋も踏ん張って！
よい……頼んだよ、みんな！！」

「そこだっ！！」

（スパーーーーン！！）

（ピロリロリ～～♪
デッデデッデッデッデデデッデ～～♪♪♪）

「やったぁーーー！　パーフェクトだ！
理想通り動いてくれてありがとう、
あたしの筋肉！　後でプロテイン飲もう！」

ウェルカム　トゥ　2ndステージ！
…………アーユーレディー？

「えっ、終わりじゃないんだ！？
……ふふ、そうこなくっちゃね！
まだまだいくよ、みんな！！」

「それは不死鳥の羽？　黄金蟹の剥製？
ペガサスの天井画？　太陽のスタチュー？
いいえ、どれも違う。この舞踏会場を
一流たらしめるもの……それが――」

「「キングオブゴージャス！」」

「私がいれば、そこが一流の空間！」

「「キングオブマジック！」」

「世界の果てまで轟く名声！
まさに私は――！！」

「「キングオブキングス！！」」

「おーっほっほっほっほ！
キングという存在に感謝しなさい！！」

また空を覆うおびただしき血涙を用い、
錆びし虚空に喚声を巡らすその様、
人智及ばぬ神罰の代行者なり。

ことごとくを慄かせ、ことごとくを還す
紅の使徒の名――
ブラッディスカイをここに記す……。

発行　黄金出版
「オールスター集結！　ウマ王軍名鑑」より

「うーん、大げさかなぁ？
……でも宣伝だし、このくらいでいっか」

「強大なイメージを植え付けておけば、
勝手に身構えてくれるだろうしね～♪」